すなぶろ

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火の神『ヒノカグツチ』ってどんな人? インタビュー形式でまとめてみた

ゲームやアニメなどに登場するカグツチ。パズドラではキャラクターとして、白猫プロジェクトでは召喚獣付きの武器として登場します。様々なゲームに『カグツチ』の名を冠したキャラクターが登場していますが、共通点はすべて火を操るということ。『ヒノカグツチ』として登場することもよくあります。

どう考えても海外の名前ではありませんが、かといって日本人に馴染みが深いかというとそうでもないでしょう。火を操るんだから漢字で書くなら「火のカグツチ」とか何とか、そこまではわかります。しかし「カグツチ」というものの正体が一向にわかりません。人の名前なのか、はたまたヤマタノオロチのような怪物なのか……。

今回はすなぶろ独占インタビューをこじつけることに成功ました。謎に満ちた『カグツチ』さんの意外な一面もあわせてご覧ください。

※降霊術等ではありません。ネタです。

古事記〈上つ巻〉

古事記〈上つ巻〉

インタビュー

― 本日はお忙しい中ありがとうございます。まさか当ブログに神様をお迎えできる日が来るとは夢にも思いませんでした。まずは自己紹介をお願いします。

ヒノカグツチです。現代社会にはあまり馴染みがありませんが、火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)と呼ばれたり、火之炫毘古神(ヒノカガヒコノカミ)と呼ばれることもあります。ゲームなんかに出演オファーが来るときは、大抵は火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)を省略して、カグツチとかヒノカグツチ名義でやってますね。自分で神を名乗るのも「なんか違うな」って思いますし、漢字だとプレイヤーさんが引いちゃうんですよ。

― いろんな名前をお持ちなんですね。漢字表記があるということは、やはり正真正銘「日本の神様」という認識でいいんですか?

はい、生まれも育ちも日本です。2600年くらい前からカグツチと呼ばれ始めましたね。神かどうかは……自分で言うことじゃないかな(笑)。僕を恐れる人も多いですし、名前だけがひとり歩きしていて「影が薄いのかなぁ」って思うこともありますし。せめてヤマタノオロチさんのように一定の姿があれば、一般の方にもイメージしてもらいやすいかも知れませんけど。

― なるほど。ヤマタノオロチさんは巨大な蛇ですが、カグツチさんはこれといったイメージがありませんね。火には形がないものですから、火の神であるカグツチさんにも形がないということでしょうか?

それが実はあるんですよ(笑)。メジャーな怪物といったものではないんですが、マグマ溶岩が僕の姿なんです。でもそれって現代の言葉じゃないですか。マグマなんて思い切り横文字ですし、溶岩という言葉も地質学から出てきたんです。昔の人にそんな知識はなかったから、火の輝く土と呼んでいるうちにヒノカグツチになったんですよ。『カグツチが山から出て村が壊滅したぞー!』って日本中で話題になって、「手に負えない」って思われちゃったんでしょうね(笑)。それで『神』と呼ばれるようになりました。

― マグマですか! なんというか、意外です(笑)。幽霊の正体見たり枯れ尾花というか……。

カグツチの正体見たり溶岩石、ですか(笑)

― そうそう(笑)。てっきり火を操る存在かなと思っていたので、まさか溶岩そのものだったとは。でも言われてみれば、日本には世界的に有名な火山がいくつもありますし、そこから火の神が生まれるのは当たり前というか。今すごく納得してます(笑)。でもそうなると、他の名前の元ネタはどうなるんでしょう? 火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)というのもカグツチさんの名前なんですよね。

そうですね。日本の神の名前に漢字が多い理由は2つあって、「当て字」と「尊称」がほとんどなんです。火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)で言うと、男神の部分は「猛き」「強い」という意味の尊称で、本来の名前だけ抜き出すと火之夜藝(ヒノヤギ)になります。

― 随分縮みましたね。ヒノヤギさんですか。

そうです。今風に言うと「超大手上場企業代表取締役兼CEO兼名誉会長ヒノヤギ」のようなもので、むしろ現代語のほうが長くなりそうですけど。

― 確かに。速男神という表記に見慣れていないと「なんて読むんだろう」と咄嗟に思ってしまいますが、代表取締役に置き換えると腑に落ちるというか。

ヒノヤギというのは、今は失われてしまった言葉です。例えば「騒ぐ」という言い回しがありますよね。「騒ぐ音が聞こえた」というのは冗長なので、これは「騒ぎがあった」になります。同じように、昔は「火のやぐ」という言葉があって、「火のやぎがあった」などと使っていました。『火事があった』というのを『火のやぎがあった』と言うイメージですね。

― 失われた言葉ですか……ロマンがありますね。ではもし騒ぎの神がいたら「耳障之騒技速男神(ミミザワリノサワギハヤオノカミ)」になったりするんですか?(笑)

可能性はあります(笑)。よっぽど耳障りで、人の手ではどうしようもない騒ぎが日常的に発生していたら、そういう神様が生まれるかも知れません。

― では、ヒノヤギという言葉は現代語に直すとどういうニュアンスになるのでしょうか?

「ヒノ」というのは「火の」です。「ヤギ」というのは、元の動詞として「やく」「やぐ」という言葉があって、これらが後の「焼く」「輝く」に変化したと考えるのが妥当ですね。つまりヒノヤギは「火の輝き」といったところです。

― となると、火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)を噛み砕くと「火の輝きの元の猛き男神ということですか。

そうです。現代語に直すとものすごく格好つけてる感じがしますね(笑)

― まさに火の神ここにあり、ですね。ところでカグツチさんは「火の神」として有名ですが、「炎の神」とはまた違うんですか? 火と炎の違いがいまいちわからないというか、「焔(ほむら)」という言葉もあったりして。現代人の感覚だと「全部燃えるものじゃん」と思ってしまうんですが。

炎の神ではありませんね。あくまでも火の神です。大きな違いは、「炎」というのは人の手に負えるもので、「火」というのは大規模な火災などを示す言葉です。元々「火」という言葉は大陸から渡ってきた言葉で、「カ」と読んでいたんですよ。火山の噴火という大事態に直面した昔の人々は、マグマのことを「地面が燃えている」「燃える土が地を這っている」と捉えました。水をかけて消化するどころか近づくことさえ出来ないので、これは「火」に分類されます。その様子を「土が火(か)いでいる」と表現したんですね。

― 火(か)いでいる、ですか。文字にするとニュアンスはわかりますが、現代の感覚だと耳で聞いただけではちょっとわかりづらいですね。

大陸から渡ってきた言葉は大抵そんな感じですよ。「たう」と言っても伝わりづらいですが、「おおあめ」と言うとわかってもらえる。「多雨」が音読みで「大雨」が訓読みだからです。

― なるほど。では「火(か)いでいる土」転じて「火(か)ぐ土」になったということですか。

その通りです。カグツチの元の意味がそれで、表記が「迦具土」になっているのは、昔の日本にはひらがながなかったからですね。もっと言うと、文字のない時代から「カグツチ」という言葉は存在していたんですが、それを古事記にまとめあげた時代にひらがながなかった。「土」だけ元の意味を保っているのは、「かぐ」という言葉がもう失われてしまっていたからです。

― それで当て字をしたんですか?

はい。かろうじて「火の神」であることは調べ上げられたんですが、「迦具土の神」だけでは何となく「土の神」のようなイメージがあります。そこで今度こそ忘れられないように「火の迦具土の神」とわざわざ付けてもらって、現代まで伝わる「火之迦具土神」となったわけです。これがなかったら僕はとうの昔に忘れ去られていたでしょうね。僕から人に語りかけることは出来ませんし。なにせ本体はマグマですから(笑)

― 「ヒノカグツチ」という名前は、実は「火の火(か)ぐ土」という二重の意味が含まれているということですか。『かぐつち』という言葉を作った人々と、それを文書に残した古事記の著者と、またそれを2600年後の我々がレビューするというのは、何だかスケールの大きな話ですね……。

「かぐ」が「輝く」になったように、「炎」も変化した形で現代語に存在します。「ほの暗い」という言葉がそうで、「炎のような小さな明かりがある程度の暗さ」という意味になります。「ほのかに」という言い回しもそうですね。

― そう言われると確かにそうですね。「大火事」とは言いますが「大炎」とは言いませんし、火災、噴火など、大きな事柄には「火」が使われているように思えます。有名人の発言で「炎上」するというのは、小さな事柄とも思えませんが……(笑)

スラングなので何とも言えませんが、それでも「有名人の発言で火事になった」だと非常に大げさな表現になります。「炎上どころか大火事じゃん」と言ったり。その感覚が僕の生まれた時代から今まで続いていて、ありがたいことに僕自身もゲームにオファーがあったり(笑)。すごいことですよ。

― では最後の名前、火之炫毘古神(ヒノカガヒコノカミ)について教えてください。

これも火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)と似ていて、「ヒノカガ」が名義になります。「カガ」は繰り返しになりますが、現代の「輝く」の元になった動詞で、「火の輝きの彦の神」となります。彦の神も「立派な」という尊称ですね。

― 総括すると、火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)「火の輝きの猛き男神火之炫毘古神(ヒノカガヒコノカミ)「火の輝きの彦の神」火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)「火の輝く土の神」ということですか。

そうです。呼び名は3つもありますが、いずれも各地で生まれた方言のようなもので、どれも「火」「まばゆい輝き」を表したものです。僕はそれでもいいんですが、昔の人々は恐怖の象徴として大勢に知ってもらおうとしたんですね。それでいろいろと飾りがついて、現代語から見るとすぐには意味がわからないものになってしまったと。

― 「噴火」という言葉が認知されていなかったから、「火の神が降臨した」と表現したわけですか。

当時Twitterがあったらハッシュタグになったでしょうね(笑)

― なるほど。「かがりび」などの言葉もカグツチさんが生み出したものなのかも知れませんね。今日は長々とお付き合い頂きありがとうございました。アニメやゲームでのご活躍を期待しています。

ありがとうございました。火は綺麗ですが、危ないので気をつけてくださいね。

参考図書

山に登って、空を眺めて、その青さが綺麗だと思った。その美しさと感動を人に伝えるために、古代の日本人は神を生み出した。いわく、「空に大きな人がいるように見えた」。自然に対する感謝と感動を神と敬う、今の日本まで繋がる「ゆるい」心。

「日本人あるある」を詰め込んだ最古の書物を、とてもわかりやすい形で解説してくれる名著です。知識ゼロから読める親切な本ですが、決して内容に妥協はありません。オススメです。

古事記〈上つ巻〉

古事記〈上つ巻〉